一十郎とお蘭さま

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一十郎とお蘭さま (文春文庫)

主人公は武士道を貫く男と美しき女、舞台は激動の幕末から明治。となれば、血湧き肉躍る物語になりそうなのに、不条理劇のような不思議な味わいの小説である。

報われることのない熱い慕情を長年持ち続けること。悔しさや虚しさを感じることも多いだろうし、世間から見れば愚かしく映るだろう。人の気持ちなんて本来簡単に変わるはずだし、なにかのきっかけでもっと報われる生き方をすることはできたはずである。それでもなお、こうした慕情を持ち続けることができたのは幸せなことなのかもしれない。