戦後日本経済史

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戦後日本経済史 (新潮選書)

『超整理法』などのベストセラーで知られる野口悠紀雄の、戦後経済史概説書。

キーワードは、この人の長年の主張である「1940年体制」。あるいは、「日本は戦後、じつは社会主義体制だった」とでもいうべき内容である。戦後の復興も、高度経済成長も、石油ショックを乗り切ったのも、バブルとその崩壊も、1940年頃に準備・構築された戦時経済体制ゆえに起きたことだというのだ。日本は敗戦とその後のGHQ統治・民主化によってまったく違う国になった、という「常識」とはまったく違う視座である。

この本は、ちょうど明治・大正期に日本の資本主義を確立した渋沢栄一のことを考えたあとに読んでいた。そのため、次のような新しい史観が浮かんできた。

明治・大正期に成長した日本の資本主義は、世界恐慌などがあった1930年代(昭和のはじめ。ちなみに、渋沢が91歳で亡くなったのは1931年)に行き詰まり、その結果として1940年代にかけて新しい経済体制(戦時経済体制)が確立された。この経済体制は基本的に現在まで続いている・・・

こうした戦時経済体制についてどのように考えたらよいか?問題なのは、この体制の下では独創性が育たないということである。IT革命によって分散型情報システムが実現した時代にあっては、このことは大いに不利になる。なるほど・・・そうした国で、個人はどう生きるべきなのだろう、と考えさせられる。

もっともこの本では「個人の自由意思など、蟷螂の斧と考えざるを得ない」とも書いている。魅力的な議論に満ちたこの著作の中で、この部分にだけは強く抗〈あらが〉いたい、と思う。

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